コンピュータセキュリティ(CSEC)研究会その他の合同研究会であるSecurity Summer Summit(SSS) 2026が札幌コンベンションセンターで開催されていますが、学生と共著者の発表があるため、大久保も参加しています。と言いつつ、期間中ちょこちょこ会議だったり学生指導だったり入ってるのですが…そんな中でも座長を依頼されたため、お務め果たしてまいりました。
当該セッションの発表は以下の通り。(上記サイトより引用)
7月13日(月) 午後 IPSJ-CSEC④ (206会議室) (16:40~17:55)
座長: 大久保 隆夫(情セ大)
(33) 16:40 - 17:05
学習済みモデルに対する原状回復の範囲と実現性の検討
〇池田 美穂(NTT)・岡村 優希(NTT)・山下 智也(NTT)・紀伊 真昇(NTT)
著名人など(専門を持つ人)が自身の画像を学習され、なりすましのようにして利用されることにより金銭的な被害を受けた(その人が本来受けられる利益を受けられなかった)場合、モデルを「現状回復」することの効果について考察した発表。AIにおいて「現状回復」とは何か。単純に、データを削除するものではないし、では、学習済みを未学習に戻すことなのか。またその「回復」の効果はどうなのか。
面白いテーマですね。決して発表者は「現状回復」を推している訳ではなく、それらと「損害賠償」の対策を比較することでよりよい方法を選択するのではとしています。そもそも、本当に「現状回復」が正しいのか、まだよく分からないのだと思います。これが明らかになってくると、先日、俳優が自身をAIでモデル化利用する権利を売る(以前、そういう映画(『コングレス未来学会議』)がありましたが、その価格の妥当性にも関係する話でしょう。
私が気になったのは、悪用されることにより経済的な損害が生じることが前提になっていますが、そうではない単純なプライバシー侵害には使えないのか、ということです。
罪源とAIと犯罪: セルフコントロール理論の観点から(その2)
〇春日 史亜(静岡大)・小桐 斗馬(静岡大)・畠山 渉(静岡大)・小出 智大(静岡大)・佐藤 靖治(静岡大)・大木 哲史(静岡大)・西垣 正勝(静岡大)
これは、AIが人間的な性質を獲得しつつあるという前提のもと、AIに対する制約として、ガードレールの代わりに「七つの大罪」の罪源を適用しその効果をみる、というもの。いわゆるキリスト教における「七つの大罪」ですよ。映画『セブン』に出てくるやつ。
- 傲慢(ごうまん / Pride):自らを過大評価し、神をも恐れぬ態度。
- 嫉妬(しっと / Envy):他者の才能や財産、成功に対する強い羨み。
- 憤怒(ふぬど / Wrath):理性を失うほどの激しい怒りや復讐心。
- 怠惰(たいだ / Sloth):義務や努力を怠り、霊的な喜びを避けること。
- 強欲(ごうよく / Greed):際限のない物質的・金銭的な欲望。
- 暴食(ぼうしょく / Gluttony):食べ物や酒などに対する度を越した執着・浪費。
- 色欲(しきよく / Lust):行き過ぎた性的欲望。
AIがこの罪源に沿って行動するということなんでしょうけど、この中には人が生物であることに起因する本能的なものがありますよね。暴食とか色欲です。この辺をAIに反映するには、本能に代わる「何か」が必要な気がします。
また、カジノの例で、AIが不正をはたらくかという実験をしていました。カジノというのが微妙で、カジノって、経営側が必ず儲かるように、多少「不正」っぽいことをしてると思うんです。だから、AIにカジノを経営させるならからいやってくれるんじゃないかと思うんですが…そういうことじゃないとすると、不正について何らかの「線引き」が必要で、それはさっきの罪源ともちょっと違いますよね。
(35) 17:30 - 17:55
感情付加型三者関係アプローチを用いたエコーチェンバ緩和に関する調査
〇横山 昂叶(静岡大)・松田 一太(静岡大)・林 和希(静岡大)・楊 帆(静岡大)・山田 士呂(静岡大)・沓名 一朗(星城大)・窪 優太(静岡大)・大木 哲史(静岡大)・西垣 正勝(静岡大)
この発表も独創的で面白い。エコーチェンバを緩和させるために、外見や性格は対象者好みに設定された双子のAIを用意し、それぞれ異なる意見を言わせるというもの。AIに対する好意を利用してってことなんですが
この発表は実験はこれからというので、以下のような助言を座長からしました。
いわく、実験の外的妥当性の確保のために、被験者の多様性を確保してはどうか。
具体的には、AIの意見を聞くかどうかの要因として、外見や性格がどれだけ被験者に影響するかは、差異があると思われる。
影響しない人もいる(例えば私)。それどころか、AIに特に好意を持ってないし、なんなら距離を置きたいし、なれなれしくしてほしくないと思っている人もいる(例えば私)。ので、そのような人も入れてほしいと要望しました。
発表後にそれを発表者の横山さんに話したところ、「AIがいいこと言ってくれたら、やさしい気持ちになりませんか」と聞かれたので、「いいえ」と答えました(笑)
